■ 一条工務店の性能とコストの強み
一条工務店は、自社オリジナル住宅設備の開発・生産を行うことができる点が強みである。床暖房やユニットバス、キッチン、窓サッシに至るまで品目を展開することでコストパフォーマンスの高い新築を提供しているので、大手企業と競合しても費用面で勝ち易く、口コミ評判も悪くない。「家は、性能。」と謳うだけあり、性能面でも、自社開発製品の品質の良さは他社分譲と一線を画すスペック。本物の高気密・高断熱な住宅で、豪雪地帯でも現実的な光熱費で全館床暖房を実現している。全館床暖房や加圧注入処理の防腐防蟻処理、積層ゴムの免震住宅、夢発電の太陽光発電システムなどを積極的に自社オリジナルとして採用することで、高いコストパフォーマンスを実現している。また、社員に還元されているかどうかは別として、財務体質は健全そのもの。
■ デザイン性の弱み
お客様第一主義とあるが、会社の都合が最優先される設計制限が弱み。南欧風の「ブリアール」なども展開しているが、デザイン性に関しては、明らかに他のメーカーに負けており、昨今リノベーションやリフォーム等で見た目やデザイン性も重要視されている中で劣っていることは大きいと思われる。特に条件付き分譲地などに行けば分かるかと思うが、どれも似たり寄ったりの外観の家ばかりで、遠くから見るとやはり一条の建物に見える。設計制限もあるので間取りも似たり寄ったり。コンセプト住宅「i-smart(アイスマート)」等も開発しているものの、規格化、工場化しての生産になるため、デザイナーズ住宅や超高所得者のニーズに応えきれない。また、社員の定着率が低く、人がコロコロと入れ替わるのも弱み。
■ これからの事業展望
省エネ住宅の法的規制により、今後も当分は市場にマッチングして、一定の顧客数が確保できると思われる。会社の業績はうなぎのぼりだが、そこで働く社員への還元がなく、現場サイドでは不満が爆発している。また、性能面で他のメーカーより優れてはいるが、どうしても純和風のイメージが強く、若い層への知名度も高く無いため、それを今後どのように払拭して行くかが課題。更に、日本の人口減少、世帯数減少による受注減は避けられず、対策として土地の購入や建売事業に力を入れているが、まだ大きな結果となっていない。消費税増税後の景気の冷え込みに備えるため開始した太陽光発電ビジネスはほぼ終了。